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高知地方裁判所 昭和58年(わ)472号 判決

裁判所書記官

兼松利彦

本店の所在地

高知市円行寺五一番地

有限会社北山観光

代表者の氏名

池田英介

本籍

同市円行寺五二番地

住居

同市中万々八一五番地

会社役員

池田英介

昭和一二年一二月一五日生

右被告人有限会社北山観光に対する法人税法違反被告事件、右被告人池田英介に対する法人税法違反、所得税法違反各被告事件につき、当裁判所は、検察官増田吉利出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社北山観光を罰金七〇〇万円に、

被告人池田英介を懲役一年二月及び罰金一、四〇〇万円に処する。

被告人池田英介において、その罰金を完納しないときは金二万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

被告人池田英介に対し、この裁判の確定した日から四年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

第一  被告人有限会社北山観光は、「円行寺ホテル」の名称で旅館業(モーテル)を営んでいるもの、被告人池田英介は昭和五二年八月一二日から昭和五六年九月三〇日までの間、同会社の監査役、同年一〇月一日からは同会社の代表取締役として、引続きその業務全般を統括掌理していたものであるが、被告人池田はその業務に関し、同会社の法人税を免れようと企て

一  昭和五四年八月一日から昭和五五年七月三一日までの事業年度における所得金額が二一、〇三六、〇六七円であり、これに対する法人税額が七、五七一、八〇〇円であるにもかかわらず、売上金額の一部を除外するなどの方法により、右所得を秘匿した上、昭和五五年九月三〇日、高知市本町五丁目六番一五号所在の高知税務署において、同税務署長に対し、右事業年度における欠損金額が六、九一一、九六八円であり、納付すべき法人税額がない旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の法人税額七、五七一、八〇〇円を免れ

二  昭和五五年八月一日から昭和五六年七月三一日までの事業年度における所得金額が二五、六三六、六七八円であり、これに対する法人税額が九、七一二、〇〇〇円であるにもかかわらず、前同様の方法により、右所得を秘匿した上、昭和五六年九月三〇日、前記税務署において、同税務署長に対し、右事業年度における欠損金額が三、五〇四、七五九円であり、納付すべき法人税額がない旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の法人税額九、七一二、〇〇〇円を免れ

三  昭和五六年八月一日から昭和五七年七月三一日までの事業年度における所得金額が三五、四四九、二七四円であり、これに対する法人税額が一三、九二四、二〇〇円であるにもかかわらず、前同様の方法により、右所得を秘匿した上、昭和五七年九月三〇日、前記税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の欠損金額が三八二、〇七七円であり、納付すべき法人税額がない旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の法人税額一三、九二四、二〇〇円を免れ

第二  被告人池田英介は、高知市東秦泉寺六一一番地二において「正蓮寺ホテル」の名称で、旅館業(モーテル)を営んでいるものであるが、所得税を免れようと企て

一  昭和五五年分(昭和五五年一月一日から昭和五五年一二月三一日まで)の自己の総所得金額が二三、八五三、五八四円であり、これに対する所得税額が八、二六七、〇〇〇円であるにもかかわらず、前同様の方法により、一八、二〇八、三八六円の所得を秘匿した上、昭和五六年三月一六日、前記税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が五、六四五、一九八円であり、これに対する所得税額が七三五、八〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税七、五三一、二〇〇円を免れ

二  昭和五六年分(昭和五六年一月一日から同年一二月三一日まで)の自己の総所得金額が四八、三六二、八三五円であり、これに対する所得税額が二二、三三一、四〇〇円であるにもかかわらず、前同様の方法により、四四、七一八、九八九円の所得を秘匿した上、昭和五七年三月一五日、前記税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が三、六四三、八四六円であり、これに対する所得税額が三一二、六〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税二二、〇一八、八〇〇円を免れ

三  昭和五七年分(昭和五七年一月一日から同年一二月三一日まで)の自己の総所得金額が六二、一三六、一六四円であり、これに対する所得税額が三〇、四二一、六〇〇円であるにもかかわらず、前同様の方法により、五五、四七一、八四八円の所得を秘匿した上、昭和五八年三月一五日、前記税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が六、六六四、三一六円であり、これに対する所得税額が八九一、〇〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税二九、五三〇、六〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人(兼被告会社代表者)池田英介(以下単に池田英介という)の当公判廷における供述

一  池田英介の検察官に対する供述調書二通

一  大蔵事務官作成の池田英介に対する昭和五八年三月二三日付、同月二四日付、同月二五日付、同月二六日付、同年四月七日付、同年五月一六日付、同年六月二日付、同年八月三日付各質問てん末書

一  池田祐子の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官作成の池田祐子に対する昭和五八年三月二三日付、同月二四日付、同月二五日付、同年四月六日付、同月八日付、同年五月一七日付、同年七月七日付各質問てん末書

一  池田祐子の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官作成の池田祐子に対する昭和五八年三月二三日付、同月二四日付、同月二五日付、同年四月六日付、同月八日付、同年五月一七日付、同年七月七日付各質問てん末書

一  矢崎敬子、大平正子の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の矢崎敬子、宮地隆史、下村和則に対する各質問てん末書

判示第一の各事実につき

一  池田君尾外二名作成の定款の謄本

一  登記官作成の登記簿謄本

一  押収してある法人税決議書綴(昭和五八年押第一三五号の一)

一  大蔵事務官作成の池田英介に対する昭和五八年五月二〇日付、同月三一日付、同年六月二一日付、同月二二日付、同月二三日付、同月二四日付、同年七月六日付各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の池田祐子に対する昭和五八年五月一九日付質問てん末書

一  大蔵事務官作成の脱税書計算書三通(昭和五四年八月一日から昭和五五年七月三一日まで、昭和五五年八月一日から昭和五六年七月三一日まで、昭和五六年八月一日から昭和五七年七月三一日までの各期間のもの)

一  大蔵事務官作成の昭和五八年七月六日付査察官調査書二通(いずれもその目次で表示する添付書類を含む)

一  押収してある金銭出納簿(昭和五八年押第一三五号の五)

判示第二の各事実につき

一  大蔵事務官作成の池田英介に対する昭和五八年五月一七日付、同月一九日付、同月三〇日付、同月三一日付、同年六月二二日付、同年七月一四日付、同月一五日付、各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の池田祐子に対する昭和五八年五月一八日付、同年七月六日付各質問てん末書

一  黒瀬時子の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書三通(昭和五五年一月一日から同年一二月三一日まで、昭和五六年一月一日から同年一二月三一日まで、昭和五七年一月一日から同年一二月三一日までの各期間のもの)

一  大蔵事務官作成の昭和五八年七月三〇日付査察官調査書二通(いずれもその目次で表示する添付書類を含む)及び同月八日付預貯金等の入出金、相手勘定調査書

一  押収してある所得税の確定申告書三枚(昭和五八年押第一三五号の二ないし四)

一  押収してある金銭出納帳(昭和五八年押第一三五号の六)

(法令の適用)

一  被告人有限会社北山観光の判示第一の一の所為は、行為時には昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一五九条一項、一六四条一項に、裁判時には昭和五六年法律第五四号による改正後の法人税法一五九条一項、一六四条一項に該当するが、右は犯罪後の法律により刑の変更のあった場合に当るから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、同被告人の判示第一の二、三の各所為はいずれも法人税法一五九条一項、一六四条一項に該当するが、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪につき定めた罰金の合算額の範囲内で、同被告人を罰金七〇〇万円に処することとする。

二  被告人池田英介の判示第一の一の所為は行為時においては昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一五九条一項に、裁判時においては昭和五六年法律第五四号による改正後の法人税法一五九条一項に該当するが、右は犯罪後の法令により刑の変更があった場合にあたるから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、同被告人の判示第一の二、三の各所為はいずれも法人税法一五九条一項に該当し、同被告人の判示第二の一の所為は行為時においては昭和五六年法律第五四号による改正前の所得税法二三八条一項に、裁判時においては昭和五六年法律第五四号による改正後の所得税法二三八条一項に該当するが、右は犯罪後の法律により刑の変更のあった場合に当るから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、同被告人の判示第二の二、三の各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するので、以上の各罪につきいずれも懲役と罰金を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから懲役刑については同法四七条本文、一〇条により最も犯情の重い判示第二の三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、罰金刑については同法四八条二項により各罪に定めた罰金の合算額の範囲内で、同被告人を懲役一年二月及び罰金一、四〇〇万円に処し、同法一八条により右罰金を完納することができないときは金二万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置することとし、なお情状により同法二五条一項を適用して、この裁判の確定した日から四年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

以上の理由で主文のとおり判決する。

(裁判官 金子與)

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